プラグの熱価
プラグ選択のノウハウ
エンジン状態・走行状態など、さまざまな状況がプラグ選択の目安になってきます。たとえば、ノーマルプラグであっても高負荷走行を続けると、焼けすぎの状態になります。このようにノーマル仕様だからノーマルプラグがあっている理論は、当てはまらない訳です。まず現状のプラグの焼け具合によって、プラグ選択を判断することが大切です。
季節によっても熱価は変わってきます。
外気温が高い夏など、吸入空気温度が高くなりエンジンの負荷が高くなります。このような時期は熱価の高いプラグを選択した方が良いでしょう。
馬力が上がるほど、熱価も上がります。
チューニング等によって馬力アップをしたとき、爆発力の増大により燃焼室温度が上がり、プレイグニッションを起こしやすくなり、プラグの耐熱性を上げ熱価の高いプラグを選択する必要があります。
スパークプラグの熱放散
スパークプラグの電極部が燃焼によって受ける熱は、図のような経路で放散されます。
この、スパークプラグが受ける熱を発散する度合いを「熱価」といい、その度合いが大きいものを、高熱価(冷え型)、小さいものを、低熱価(焼け型)と呼んでいます。 これは燃焼室内のガスの温度と、スパークプラグの設計によって左右されます。
低熱価と高熱価
低熱価プラグは、碍子脚部が長く、火炎にさらされる表面積およびガスポケットの容積が大きくなります。
また碍子脚部からハウジングに至る放熱経路が長くなっているので、熱放散が少なく、中心電極の温度は上昇しやすくなります。
これに対し、高熱価プラグは碍子脚部が短く、火炎にさらされる表面積およびガスポケットの容積が小さくなります。
また放熱経路が短いので、熱放散が多く、中心電極の温度は上昇しにくくなります。
プラグ温度と車速(1)
プラグ温度と車速、熱価との関係は図のようなグラフで表されます。
スパークプラグには使用上、下限温度として自己清浄温度があり、上限温度としてプレイグニッション温度という制約があって、中心電極の温度が約500~950℃の間にあって初めてその機能が完全に発揮されます。
プラグ温度と車速(2)~自己清浄温度
中心電極の温度が500℃以下の場合には、燃料が完全燃焼しない時に発生するフリーカーボンが碍子の表面に付着します。そのため、碍子とハウジング間の絶縁が低下して電気の漏洩が起こり、ギャップでの飛火が不完全となり、着火ミスの原因になります。
この500℃の温度は、カーボンがこの温度以上になると、燃焼により自然に焼き切れる温度で、自己清浄温度と称しています。
プラグ温度と車速(3)~プレイグニッション温度
中心電極が950℃以上になると、電極が熱源となって火花が飛ばなくても点火するプレイグニッション(過早着火)が発生します。
このため出力の低下を起こし、電極の溶損、碍子の破損にまで至ることがあります。
プラグ温度と車速(4)
低熱価プラグは、中心電極の温度が上昇しやすく、低速でも自己清浄温度に達しやすく、碍子部にカーボンが付着しにくい。
これに対し、高熱価プラグは、中心電極の温度が上昇しにくく、高速でもプレイグニッション温度に達しにくい。
したがってこのタイプは一般的に高回転・高出力エンジンに適しています。
このようにエンジンの性格や運転状況などに応じて、適切なプラグ熱価を選択する必要があります。