プラグの点検・交換 – 不具合の診断方法
不具合の診断方法
スパークプラグの状態を診断することは、エンジン不具合の原因を究明する効果的な方法です。
正常な状態
碍子脚部は灰白色またはキツネ色 で、電極の消耗はわずかである。
異常な状態
エンジンの不具合によって、スパークプラグの状態は下のような可能性があります。
エンジンの不具合
ケース 1 | 始動不良 アイドリング時の失火 通常走行時、または急加速時のみの失火 | 不具合診断 1へ |
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ケース 2 | 高速走行時または急加速時のみの失火 | 不具合診断 2へ |
ケース 3 | 高速・高負荷走行時のパワー損失 ピストン・バルブ・シリンダー等の損壊 | 不具合診断 3へ |
ケース 4 | エンジンの不具合ではないもの | 不具合診断 4へ |
スパークプラグの状態
不具合診断 1
<ケース 1>
- 始動不良
- アイドリング時の失火
- 通常走行時、または急加速時のみの失火
カーボン付着
外観 | |
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碍子脚部・電極部が乾いた柔らかい黒いカーボンで覆われる。 | |
結果 | 始動不良、失火、加速不良 |
原因 | 短距離走行(エンジン冷間走行)の繰り返し、誤ったチョーク(濃すぎる混合気)、点火時期の遅れ、プラグ熱価が高すぎる |
オイル付着
外観 | |
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碍子脚部・電極部が湿ったオイルで黒光りしている。 | |
結果 | 始動不良、失火 |
原因 | ピストンリングやシリンダ、バルブガイドの摩耗などによるオイル上がり(新しいエンジンやオーバホール直後のエンジンで 起こりやすい)、混合気中の高いオイル含有量(2サイクルエンジン) |
燃料付着
外観 | プラグを外した直後はガソリンで濡れているが、すぐに乾いてくる。 |
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結果 | 始動不良、失火 |
原因 | 空燃比が濃すぎて着火していない。(アクセルペダルを何回も踏んで始動操作するなど。) |
処置 | すべてのプラグを取り外し、クランキングして新鮮な空気をシリンダ内に入れ、空燃比を薄くする。 |
極度な電極消耗
外観 | |
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中心・接地電極が丸味を帯び、ギャップが広くなりすぎている。 | |
結果 | 始動・加速不良 |
原因 | メンテナンス不十分(プラグ寿命) |
プラグギャップ過大
外観 | 適正ギャップのプラグより、ギャップが広い。 |
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結果 | 始動・加速不良 |
原因 | ギャップが不適切、プラグの選定不良 |
碍子の割れ
外観 | |
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碍子にひび割れ | |
結果 | 絶縁不良によりショートを引き起こし、アイドリング不良や加速時での失火を招く |
原因 | スパークプラグ着脱の不適切(スパークプラグレンチの使用角度、締付トルクなどの不適切) |
不具合診断 2
<ケース 2>
- 高速走行時または急加速時のみの失火
鉛付着
外観 | |
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碍子脚部が黄または黄褐色の燃えかすのような付着物、またはつやのある表面で覆われる。 | |
結果 | 急加速時または高負荷走行時での失火、ただし通常走行時では不具合は出ない。 |
原因 | 鉛含有量の多いガソリンを使用 |
不具合診断 3
<ケース 3>
- 高速・高負荷走行時のパワー損失
- ピストン・バルブ・シリンダー等の損壊
オーバヒート
外観 | |
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碍子脚部は極端に白く焼け、小さな黒い付着物がつく。電極の消耗も早い。 | |
結果 | 高速・高負荷走行時でのパワー損失 |
原因 | プラグの締付不良、エンジンの冷却不良、早すぎる点火時期、低すぎるプラグ熱価、ひどい異常燃焼 |
プレイグニッション
外観 | |
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中心電極や接地電極が溶損または焼損している。碍子脚部にはぶつぶつができ、アルミニウムなどの金属粉が付着している。 | |
結果 | エンジンダメージによるパワー損失 |
原因 | 多くが過熱、プレイグニッションは点火前に燃焼が起こってしまう現象。 プラグ熱価の低すぎ、点火時期の進みすぎなど。 |
碍子の破損
外観 | |
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碍子脚部が割れる、裂ける。 | |
結果 | 失火 |
原因 | ひどい異常燃焼、ギャップ調整の不注意 |
ハウジング取付ネジ部の溶損
外観 | |
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ハウジングの取付ネジ部の溶損 | |
結果 | エンジンダメージによるパワー損失 |
原因 | プラグ締付不良 |
点火先端部の物理的損傷
外観 | |
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電極が曲がり、碍子脚部が破損。電極上にしばしばへこみが見られる。 | |
結果 | 失火 |
原因 | プラグのネジリーチがエンジンヘッドから長すぎる、燃焼室内に何か異物(小さなボルト・ナットなど)がある |
接地電極の破損・折損
外観 | |
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接地電極が途中、または根元から折損、断面の多くは疲労破壊面である | |
結果 | 失火、接地破片の噛み込みによるエンジン及び補機類の破損 |
原因 | 高出力・高回転エンジン及びチューニング・改造等による接地電極へのストレス増大、 整備不良・過酷な使用環境等による過大振動、締付け不足⇒プラグ緩みよる過大振動 |
対策 | (1)プラグ選択 ・接地電極へのストレス増大に対して、接地電極小型プラグへの変更がプラグ側からは有利になります。 例:接地2極化、接地小型化(テーパーカット)、レーシングプラグ、沿面プラグ化 等 但し、根本的には車両チューニングレベルにマッチしたプラグを選択していただくことが必要です。 (2)エンジン・車体整備 ・エンジンまたは車体整備による過大振動の低減 ・推奨トルクでのプラグ締付け |
不具合診断 4
<ケース 4>
- エンジンの不具合ではないもの
コロナ汚れ
外観 | |
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ハウジングのすぐ上の碍子上に茶色の付着物がつく | |
結果 | プラグ性能には影響なし |
原因 | 硝子付近の空気に電気的ストレスがかかるために生ずる(しばしば間違えられるようなスパークプラグのガス漏れではない) |